エイリアンブラックホールが放つ型破りな重力波


 昨年5月、重力波観測施設「LIGO」と「Virgo」が、10分の1秒にもみたない間に4度続いた短い重力波シグナルを検出した。それが示していたのは、にわかには信じがたい異常なブラックホールの存在だった。

 その爆発的な重力波を発生させたブラックホールの質量は太陽の142倍で、重力波を通じて検出されたものとしては観測史上最大。それが宇宙へ向けて放ったエネルギーは、太陽質量の約9倍に相当する。

 異常というのはその大きさだ。現代の宇宙理論によれば、この大きさのブラックホールはこの宇宙に存在するはずがないのである。それゆえに海外サイトでは「エイリアンブラックホール」と呼んでいる。

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エイリアン・ブラックホールの爆発的な重力波

 型破りなブラックホールの存在は1年以上かけて確かめられた。その発見は宇宙についての根本的な謎を突きつけるとともに、銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールの形成メカニズムについてのヒントを与えてくれるという。

 この重力波は「GW190521」と呼ばれている。それを発生させたブラックホールは、重力波によって検出されたものとしては観測史上最大。

 それだけでなく、これまでに発見されたものとしてはもっとも遠くかつ最古のブラックホールでもある。そこから放たれた重力波は強力そのもので、170億光年の距離を旅して地球に到達することができた。

 じつはGW190521は、2つのブラックホールが合体したときに放出されたものだと考えられている。

 合体した2つのブラックホールは、それぞれ太陽の66倍と85倍の質量だった。結果として誕生したブラックホールの質量は太陽の142倍。消えてしまった太陽9つ分の質量は、エネルギーとして宇宙に放出された。地球で重力波として検出されたのもそれだ。


Numerical simulation of a heavy black-hole merger (GW190521)

存在するはずのないブラックホールの謎

 理論上ありえないとされるのはその大きさだ。

 宇宙でまたたく星々は、燃料を使い果たして寿命が尽きると、自身を支えていた圧力が減少し、自らの重力によって崩壊し始める。

 これによって、地球を照らす太陽をはじめとする質量の軽い星ならば「白色矮星」となる。太陽の8倍以上の質量を持つ星ならば、小さいながらも恐ろしいほどに高密度な「中性子星」となる。

 そして太陽の20倍以上の質量があれば、そこからさらに崩壊を続け、ブラックホールになる。最終的な質量は太陽の数倍から40倍程度だ。

 ところが、太陽の130倍から250倍の質量を持つ星の場合、不思議なことが起こる。内部が高温になり、それが重力を支える圧力を発生させる。それはとんでもないエネルギーで電子と陽電子のペアに変換するほどだ。

 だが、そのせいで星は不安定にもなる。すると圧力が突如として低下し、星は収縮してさらに高温に。こうして暴走した核融合によって大爆発を起こす――「超新星」だ。星は跡形もなく吹き飛んでしまい、ブラックホールになることはない。

 このことは、仮にブラックホールが星の崩壊によってのみ形成されるものであるのなら、太陽のおよそ60~120倍の質量を持つものはこの宇宙に存在しないということを意味する。

 ところがGW190521の発生源は、あるはずのない太陽の66倍と85倍の質量を持つブラックホールの合体だった(特に後者は、ありえない質量の範囲にぴったり当てはまる)。

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合体したのは合体によって生じたブラックホールである可能性

 一体どのようにすれば、そんな規格外のブラックホールが誕生し、それほど強烈なエネルギーを放射しうるのか、今のところはっきりとしたことは分からない。

 だが可能性としては、合体してGW190521を生じさせたブラックホール自体が、ブラックホールの合体によって形成された線が考えられる。

 しかし、これが実際に起こる確率は、中国とアルゼンチンゴルフプレイする人たちのボールが、空中で衝突してしまうよりも低いのだという。


GW190521 The Impossible Black Hole

超大質量ブラックホールのミッシングリンク

 問題のブラックホールは、初めて観測された「中間質量ブラックホール」でもある。

 中間質量ブラックホールとは、恒星が崩壊して形成される「恒星質量ブラックホール」よりは重いが、銀河の中心にある「超大質量ブラックホール」よりは軽いブラックホールのことだ。

 銀河系の中心にある超大質量ブラックホールはいかにして形成されたのか?

 ——これは天文学最大の謎の1つとされているが、中間質量ブラックホールはそのミッシングリンクとみなされることがある。それがいくつか合体すれば超大質量ブラックホールに進化することができるからだ。

 だからこそ、GW190521の検出は、天文学にとって大きな意味を持つのである。

 なお、検出されたシグナルが短いものだったために、分析は難しく、さらにその複雑さから、もっと珍しいものが発生源である可能性もあるという。それでも、2つのブラックホールの合体によって強烈なエネルギーが放出されたというのがもっとも可能性の高い説明であるとのことだ。

 重力波の発見については『Physical Review Letters』(9月2日付)、その性質などの考察については『Astrophysical Journal Letters』(9月2日付)に掲載されている。

References:unilad/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52294362.html
 

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(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

BHは恒星だけ吸い込んでるわけじゃないだろうし。星にならなかった星間物質の方が総量は多いと思うんだが


ちょっと前まで重力波の実在がどうたらで議論してなかったか? 重力波で*ホール発見っていつのまにそんなことに…。


170億光年?宇宙が誕生して130億年ぐらいだったハズだが…重力波て光より早いのか?名前は忘れたが宇宙誕生絡みで観測には「130億光年の壁」があると聞いた覚えがあるのだが


恒星崩壊⇒*ホール(質量:太陽の40倍以内)⇒周辺物質を吸引して拡大(最終的に66倍&85倍)⇒*ホール同士引きあって融合    ではいかんのか?


事象が起こった後も2点間の距離は延び続けるから、例えば互いに離れるように膨張したら、地球基準で70億年前に発せられた光が地球に届くのに150億年かかることもある らしい


邪教の館無しに高レベル悪魔作り出すみたいな話かな