ひとたび気づくと、なにやら違う光景が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。

【その他の画像】

●「異形の寺」 

『彼氏のふりして、一緒に実家に来てくれない?』

 春から始めたバイト先の学習塾で、指導係の社員の千尋さんから唐突にそんなことを言われた。彼女はH県の寺の娘で、実家から見合いをしろとうるさく言われるので、男を連れて帰って納得させたいというのだ。

シフト見たけど、ヒマなんでしょ。1泊2日、カラダ貸してよ』

 面白そうだと思い、二つ返事でOKした。『みんなには秘密ね』という、年上の美人からの誘いにときめかなかったと言えば嘘になる。

 新幹線から鈍行に乗り換え1時間、日も暮れたころにやっと彼女の故郷のS町に着く。久宜寺(くぎじ)というその寺は、海を見下ろす岬に建っていた。異様な寺だった。「本殿」と「庫裏」だと説明された二つの建物はいずれも壁が真っ黒に塗られていて、全ての窓が雨戸で鎖されていた。

 「庫裏」は僧堂と寺務所を兼ねた施設、つまりは千尋さんの実家だった。玄関先で、そろって白い僧衣に黒い輪袈裟をかけたふたりの男性が待っていた。父と兄だという。父は『娘から話は聞いている』と言い、荷解きする間もなく食堂(じきどう)に案内された。

 娘の彼氏だ、質問攻めにされるだろうという予想は外れた。「父」も「兄」も、隣に座る千尋さんさえ一切、会話を交わすことなく、ただ俯いて夕食を――冷めきった豆の煮物やカビ臭い漬物といった、精進料理としても粗末な食事をつつくばかりだった。

 気まずい夕食の後で「兄」から『本殿の仏堂に布団を敷いたからそこで寝てくれ』と案内され、俺はいよいよ来たことを後悔した。

 仏堂には朱塗りの祭壇が据えられ、大小さまざまな二十ほどの仏像のようなものが並んでいた。いずれも彫り方はかなり荒く、かろうじて顔は笑みを浮かべていると窺えるものの、手足も判然とせずノミの削り痕が生々しい。似たものを教科書で見たことがあった。「円空仏(えんくうぶつ)、ですか?」

 江戸時代初期に全国を行脚し、各地に木彫りの仏像を残した僧。円空については、そのくらいしか知識はないが。

『似たようなものです。……お手は触れないように』

 「兄」はそう言ってこちらに薄く微笑んだ。

『夜が更けてから“何か”がやってきても、決して仏堂から出ないでくださいね。ただ黙って布団をかぶっていれば、朝になりますから』

『な……何か、ってなんですか?』

 ゾッとして訊いたが答えはなく、「兄」は、『火気厳禁ですので』とだけ言い置いて行ってしまった。

 庫裏にいるはずの千尋さんにLINEメッセージを飛ばしてみたが、既読にもならない。

 スマホの時計を見ると、23時を回っていた。長旅の疲れを改めて感じ、早々に寝てしまうことにした。

 ――ふと目が覚めた。夜中の2時頃だったと思う。

 ぷたん、ぷたん、と、水気を含んだ重いものが床に叩きつけられるような音が、外から聞こえている。……足音? 俺は布団の中で身を固くする。

 月明かりが、仏殿の障子戸に「それ」の影を落としていた。

 四つんばいになった人間のように見えた。廊下を、何かを探すように這いずっている。犬が唸るような声が耳に届いた。

 ……寝る前に妙なことを言われたせいで、幻を見ているのだと自分に言い聞かせた。震える手で、枕元のバッグから煙草を探し、火をつけた。一服して頭が冴えれば、妙なものは見えなくなるはずだ。火気厳禁と言われたが、知るものか。

 背後でカタカタカタ……と乾いた音がした。仏像たちが小刻みに震えているのだ。

 すがるように煙草を深く吸い、電灯を点けようと壁のスイッチを探す。だが、なぜか灯りがつかない。

 唸り声が、はっきりした音として耳に届く。……エンクエンクエンク。そう低い声で繰り返していた。

 ――円空? 俺は倒れた像のひとつを手に取った。高僧の加護にすがる亡者の霊。そんなイメージが脳裏に浮かんだ。

 これが欲しいならくれてやる。無我夢中で、障子に向かって仏像を投げつけた。

 そこで記憶が途絶えた。

 翌朝、救急車サイレンに目を覚ました俺は、障子の破れ穴と、床を焦がした吸殻を見て、「あれ」が現実だったのだと思い知らされた。

 外に出ると、救急隊員が担架で「父」をかつぎ出していた。仰向けにされた「父」は両手を虚空に伸ばし、驚愕したように目を見開いていた。……生きているようには見えない。

 それに、記憶にある彼の身長に比べて、担架が短すぎる気がした。下半身がどうなっているかは、毛布で覆われていて分からなかったが。

 茫然と立ちすくむ千尋さんと「兄」を見つけ、俺は駆け寄った。

「何があったんです?」

 千尋さんは俺の姿を認めると、泣き笑いのような顔をした。

『無事だったんだね……キミはここに居ない方が良い。早く帰って』

 肩を掴まれ、有無を言わさぬ口調でそう言われた。

 後日、千尋さんが塾を辞めたと室長から聞いた。

『急な話でね。2年連続で夏期講習中に参っちゃうよ』

 室長の言葉に、俺は聞き返す。「2年連続?」

 室長は苦い顔で、ああ、と頷いた。

『去年も今頃、バイトがひとり辞めちゃってね。彼も千尋ちゃんが指導していた男の子だったんだけど』

「その人は、どうして辞めたんですか?」

『さあ。郵送で退職届が送られてきて、そのまま音信不通でね』

 室長はそう言って溜息をついた。

●「異形の寺」解説

 寺に現れた怪異は本当に、語り手の考えたとおり「高僧の加護にすがる亡者の霊」だったのでしょうか。「それ」は本当に、「円空、円空」と言っていたのでしょうか?

 そして煙草を吸い、仏像を投げつけたことで彼が難を逃れられたのだとしたら、「兄」の「火気厳禁」「仏像には手を触れるな」という注意は、まるで怪異への抵抗手段を潰すためのもののようです(東北には、「山で悪いモノが近くにいると感じたら、煙草を吸うと祓うことができる」という言い伝えが残る地域があるのだそうで、近年の怪談でも「煙草を一服すると怪異から逃れられた」という話型は珍しくありません(無論、「山では煙草が魔除け」というのは、実際には「煙草の匂いで人間がいることを知らせ、危険な野生動物を近づけない」知恵だったのでしょうが)。

 えんくえんくえんく……喰えん、喰えん、喰えん……。

 「久宜」寺という名前も、思えば意味深です。クギ。久宜寺が毎年、夏の決まったある日に海からやってきて、生贄を食らうことを欲する怪異を鎮めるための「供犠」の寺だったとしたら。地名などで、縁起の悪い字が慶字に書き替えられるのはよくあることです。「千尋さん」が、外から生贄を調達する係を務めていたのだとしたら……。

 「父」は、語り手が逃げ延びた代わりに「食われて」しまったのでしょうし、前の夏に音信不通となった「バイト」の男の子もおそらく……。

●地名と怖い話

 「地名に怖い意味が隠されていた」という話はよく聞きますが、逆に「何でもない地名だったはずが後付けで怖い名前になった」という例もあるようです。

 たとえば、渋沢栄一の故郷として知られる埼玉県の「血洗島」。いつ金田一耕助が来てもおかしくない字の並びで、「赤城の山の神が下野の二荒山の神と戦ったときに、得た傷口をこの地で洗い流した」という伝承が伝わっているそうです。

 しかし実際には「血洗」という地名は、アイヌ語の「ケッセン(「岸・末端」といった意味で宮城の「気仙沼」と同語源)」に漢字を当てたもの、あるいは利根川の氾濫が相次いだ時代に「地洗い」もしくは「地荒い」と呼ばれたのに由来するという説が有力なようです。

 ちなみに「赤城の山神の戦い」云々の神話は、日光の「戦場ヶ原」という地名から着想を得たストーリーであるらしく、さらに言えば「戦場ヶ原」は元は、単にめちゃくちゃ広いことから「千畳ヶ原」だったのではないかという説があり、二重に「字面と音の響きにつられて後から意味が付加される」パターンだったようです。

ねとらぼGirlSide/白樺香澄)

●白樺香澄

ライター編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリクラブ」に所属。怖がりだけど怖い話は好き。

バイト先の先輩に誘われたある寺での出来事……意味がわかると怖い話を紹介します


(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

ついに説明を放棄して超常現象オチ。食えん食えんと人語で愚痴内容なら意思なき唸り声にならない。障子の外まで煙草の煙? 火気厳禁(苦手)と知ってるのに食われた父。兄と千尋が無事な理由に言及なし。千尋が怪異の表面化を隠蔽しようとしない。前任の退職届も千尋の隠蔽工作だろうが、前任者の親族等から塾に行方不明の問い合わせがないのは無理。どんどんディテールが粗くなってる。


「本殿」というのは神社で使われる表現で基本的に寺には存在しません。「供儀」も仏教では用いない表現です。舞台を神社に変える方がよいのではないでしょうか


意味がわかると怖い話じゃなくて、普通の怖い話だった。


カラダを借りるって言い方で憑依でもしてるんじゃないかと思ったけどそうじゃないのかよ。文中の「父」やら「兄」やらの書き方はただ単に"千尋さんの"っていう文言を省略するためってこと?てかこういうのは最後の方の文章で意味が分かるように書くべきなのにそういうわけでもないし、ただそれっぽく書いただけ、正直まとめサイトにあるやつの方がましなレベルの駄文としか言えない


意味がわからなくても怖いじゃねーか


結局意味の分からない話だった


単純に異形の生贄にされたけど、偶然対抗できちゃって助かったけど、儀式失敗で彼女の「父」が*だ話。


美人局に失敗してざまあって話(意訳)


頭のおかしい喫煙家「一服すれば変なものは見えないはずだ! 火気厳禁なんか知らねぇ! ええい、吸っちまおう!あっ床焦がしちゃった!」……おお怖い怖い。


父の下半身は食われてたって事なの?


しょおおおおーーーーーーーーーもな!もう意味が分かると怖いじゃなくて単なる怪談になってるし相変わらず焦点となる部分以外の余分な情報が多すぎ 前々からそうだったが中途半端に民俗学要素混ぜるのもやめろ


煙草で追い払えるなら父も煙草使えばよかっただろう その程度のことで済むのに毎年生贄をささげるとかちぐはぐ


どこら辺が意味が分かるとなんだ? 思いっきり異形のモノっぽいのが出てるやん。後、1年に1人のペースは流石に幾ら何でもマズいでしょ;せめて10年に1人位にしとけよ。


内容もレベル低し意味が分かる関係ないし、なんなんこれ?30分も調べればネットに幾らでも転がってるんだから、もうちょっとマシなの拾ってこいよ・・・こういう詐欺みたいな*丸出しなの載せてたら誰も読まなくなるぞ


最初はサマーウォーズかと思っていたら耳なし芳一か八尺様だった。


担架が短いってどういう意味? もし下半身を食われて無くなっているなら、バランスを取るのにずらすから、頭の方にスペースが出来て、相対的に担架が長く感じると思うのだが?


これなら外から兄や千尋の声で「もう出てもいいよ」「タバコ吸っていいよ」みたいな誘惑の声に耐える話にした方が面白かったのでは?で、耐え切って意識失う→自室で目が覚めたら千尋がお見舞いに来てくれてて「ありがとう」と感謝したら「借りたものを返しに来ただけだから」…みたいにすればギリ意味怖な話としても成立する気がする。