中世の弓矢

中世の弓矢の殺傷力がすごい public domain

 中世のイギリスで使用されていた弓矢には驚くべき殺傷力が秘められていたことが、新たなる研究で明らかになったようだ。

 矢には、わざと羽根をつけて時計回りに回転させて敵を射貫くよう計算されていた可能性があるという。弓矢(ロングボウ)に頭を射抜かれた頭蓋骨の分析を行ったところ、その威力は銃弾なみだったという。

 弓矢の性能ももすごいアーチャー(射手)のテクニックも相当なものだったのかもしれない。

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骨まで貫通。中世の武器、ロングボウの威力を検証

 イギリスロングボウ(長弓)は、敵の鎧をも貫くほど強力な中世の武器だったと言われている。

 とくに百年戦争のアジャンクールの戦いのときは、これが戦に勝利した決定的な要因のひとつになったかもしれない。英エクセター大学の考古学チームの新たな研究によると、ロングボウの矢による傷が、現代の銃創とよく似ていおり、骨までも貫通できるほどの威力があった証拠を見つけたという。

 この研究論文は『Antiquaries Journal』に発表された。

THE FACE OF BATTLE? DEBATING ARROW TRAUMA ON MEDIEVAL HUMAN REMAINS FROM PRINCESSHAY, EXETER | The Antiquaries Journal
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquaries-journal/article/face-of-battle-debating-arrow-trauma-on-medieval-human-remains-from-princesshay-exeter/

 これまで、ロングボウが戦闘でどれほど効果があったかについて、研究者たちは繰り返し議論を重ね、レプリカを使った再現実験も何百回と行われてきた。

 エクセター大学のオリバー・クレイトン教授ら研究チームによると、矢は完全に安定せずに回転がかかった状態で飛ぶため、戦闘員が負う傷の形状に影響するはずで、分析すれば、さまざまな議論に決着をつけるための骨学的証拠の重要性がわかるという。

頭蓋骨に刺さった中世の矢

イングランドエクセターにある中世のドミニコ会修道院墓地から発掘された頭蓋骨に残された傷穴の挿入口の復元
image credit:Oliver Creighton/University of Exeter

戦闘犠牲者の埋葬地で発見された矢じりによる外傷の証拠


 中世の墓地の遺骨から、武器でつけられた暴力的外傷の直接的な証拠が見つかるのはまれだが、よく知られた歴史的な戦闘犠牲者の大量埋葬地は例外だ。

 埋葬地の遺骨は、兵士たちがどのようにして戦い、殺されたのか、どんな武器が使われ、どのような傷を負って死んだのか、どんな武具を身に着けていたのかなど、中世の戦争の現実について有益な情報をもたらしてくれる。しかし、とくに、矢じりによる外傷の証拠は、めったにおめにかかれない。

 今回の研究で調べた22の骨の破片と3本の歯からは、外傷の痕跡がはっきりとわかった。これらの骨はすべて、ショッピングモール建設に先立って、1997年から2007年にかけて発掘されたエクセターのドミニコ会修道院墓地跡から回収されたものだ。

 1232年に建設され、1259年に正式に献堂されたこの修道院の墓地には、裕福で地位の高い俗人も埋葬されていたという。

 とくに、修道院の北側の身廊下には、無数のバラバラの遺骨が埋まっていて、頭蓋骨や手足の骨など、さまざまに違う時代のものが混在していた。中世の埋葬地にありがちだった、後世の墓地が挿入された形になっていた。

 22の骨の中に、右目の上から頭の後ろにかけて貫かれように穴のあいた頭蓋骨がある。研究者たちは、矢が時計まわりに回転しながら命中し、頭蓋を砕いたのではないかと考えている。

弓矢による頭蓋骨損傷

右目の上から頭にかけて貫かれた矢 image by:Oliver Creighton/University of Exeter

銃の弾丸と同じ回転をする矢


 中世の矢には羽根がついていたため、放たれた矢にスピンがかかり、空中を飛んでいる間により安定し、正確にターゲットを目指したと推測される。 これが、矢に羽根をつけてわざと時計まわりの回転がかかるようにした、初めての証拠かもしれない。

 注目すべきは、現代の銃の製造者も、発砲された弾丸が時計まわりに回転するように銃を作ってきたことだという。さらに、矢柄が頭蓋骨に刺さり、それを正面から引き抜いたためか、よけいに損傷が大きくなっている例もあるという。

 矢じりは、四角錐、もしくはダイヤ型をしたボドキンタイプで、当時の戦争で使われていた一般的なものだった。 

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image by: image by:Oliver Creighton/University of Exeter

 右の脛骨の上近くにもうひとつ穴があいているものもあり、矢が後ろからふくらはぎの肉を貫ぬき、骨で留まったことがうかがえる。大腿骨にも矢でかすったような傷が見られたが、これは、刃のついた道具によるものらしいという。

右の脛骨を貫いた矢

右の脛骨を貫いた矢 image by:Oliver Creighton/University of Exeter

 この頭蓋骨と脛骨、大腿骨は同じ犠牲者のものかもしれない。
最初に頭に受けた傷が致命傷になり、犠牲者がうつぶせに倒れたとき、続いて脛骨、大腿骨をやられたというシナリオが考えられる。

しかし、これはあくまで推測で、武器の進入角度を説明するだけのもので、犠牲者が立っていたのかどうかの説明は難しい。あるいは、犠牲者は馬に乗っていたか、高い場所に立っていた可能性もある


 これらの結果は、中世のロングボウの威力に対する我々の理解や、考古学的な記録における矢の傷をどう認識するか、戦闘の犠牲者がどこに埋葬されたか、などに大きな影響を与えると、クレイトンは語る。
中世の世界では、目や顔に矢を受けて死ぬことは、特別な意味があった。聖職者が、目に矢を受けた傷を神の定めた罰だとみることもあったのだ。

1066年のヘイスティングスの戦場で、目を射貫かれて死んだハロルド二世がこれに納得するかどうかはわからないが、我々の研究は、矢によってつけられたこうした傷の恐ろしい現実に焦点を当てている

References:archaeologynewsnetwork / arstechnicaなど/ written by konohazuku / edited by parumo 全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52290882.html
 

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中世の弓矢の殺傷力はえげつなかった。銃弾と同等の威力があった可能性(英研究)


(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

ジャック・チャーチル「しかも銃とは違い音もしない、弓は最高だぞ」


和弓もそうだけど、大型の弓には浪漫がある


膝に矢を受けてしまってな・・・


日本にも欧米にも人が扱える強弓で甲冑貫きとか、一矢で複数人貫いたとか記録残ってるから、扱う人によっては拳銃より強いのは有名だぞ。まあマシンガンやショットガン、スナイパーには勝てないから狩りでも使ってる人ごくごく一部になってしまったが。


固定してない鏃とか工夫してたのかな?弓は1000人*が出来るとかなんとか


そんな剛弓どうやって引いたのかという疑問も出るが、引けたんだろうな…


高いところから打てばその分威力も増すんじゃないの?


熟練した弓士はそこらの銃士より優れているだろう、ただ銃の利点はその熟練した弓士を育てるのに掛かるであろう10年や20年の歳月を無視して即、人を殺傷しうる攻撃力を与える事にあるので…


銃のほうが射程が長い。そして引く人間の腕力に依らないから、大量に用意できる。要素だけをみることに、そこまでの意味は無いよ。


イングランドの弓兵は幼いころから強弓を引く鍛錬をするため、体の左右の発達が違っていたという、人間シオマネキ状態だったらしいよ


ここで言われている現代銃は恐らく初速が450m/s以下の拳銃弾でしょうね。威力だけで見るなら45口径よりも大きい69口径で多量の黒色火薬を使うマスケット銃の方が現代の拳銃弾よりもストッピングパワーは遥かに大きいです。頭蓋骨が貫通程度で済んでいるのは22~38口径の弾ぐらいの威力でしょうね。なぜ威力を下げたのかは、連発式にするためなのと深い関係があるでしょう。


ウィリアム・テル時代を描いた「狼の口」に登場したクロスボウの矢が500mlペットボトルくらいの太さがあって、当たった首を吹っ飛ばす描写があるんだけど 金属鎧を射抜く威力と質量のバランスもあってああなったんだろうな


石でさえ人の骨を砕くのに十分なエネルギーがあるからな…


そらフルプレート着て戦場で斬り合い出来る筋力のある人間と、それに耐えれる強弓とかそらヤバェでしょう。


そんなロングボウを相手に、ただひたすら突進を繰り返した国の軍団があったらしい。


銃弾は矢のように長くないのでジャイロ効果で安定させないと横向いた状態で当たったりするけど,矢の場合は回転させなくても矢羽が安定翼になるので歳差運動する銃弾よりも的に対して垂直に当たる.わざわざ回転するように矢羽を付ける意味があるとは思えない.


昔の弓使いは左右の腕の長さが違ってた、人体が変形するほどの鍛錬をして漸く一人前だからね、銃が如何に優秀か分かるよ


>中世の矢には羽根がついてた今でもついてるんですが。後ロングボウは曲射で重力加速度が載るから威力が増す。


日本の和弓なんて人*まくってるからな 海外のとは全くの別物だから比べちゃいかんけど


源為朝「甲冑武者射貫くとか余裕だろ、船だって撃沈できるんだぞ」


曾孫がインフレしまくって影が薄くなった、「清和源氏の亀仙人」こと八幡太郎義家=サン


同じ弓でも場所や時代によって全然別物だと何かの番組で見たな。ランボーのアレ好き。


緒戦は熟達したロングボウ部隊のイングランドがクロスボウ主体のフランスに優勢だったが次第に取り扱い・習熟が容易なクロスボウ側が盛り返すってのも歴史の面白さ


>000さん でかい弓は矢も長いので、弦で押されて飛び出すときに矢がしなるんですよ。矢をゆっくり回転させるとしなりが安定しやすくなります。 矢羽根の角度を強めにすると回転が増す反面、空気抵抗も増大して矢が減速しちゃうので、一般的に遠くを射るときほど回転を緩めにします。


まぁアシタカも鎧武者の首飛ばしてましたし…


熟練すると1分に10本打てるとか。逆茂木とかで妨害した相手を、フルプレートさえ貫通する矢の雨を降らせてハリネズミにする。場合によっては味方ごと巻き込み、毀滅した相手に予備兵力でトドメを刺す。ロングボウ使いは捕まると必ず親指を切られるので、Vサインは挑発のポーズだったそうな


そうだね、弓おっかないね。威力だけなら小銃弾と遜色ないといってもいい。ただ矢が「かさばる、壊れる、つくるの割とめんどい」という、移送、補給の問題が実は相当デカい。ついでに既出コメさんが言ってるように習熟、体づくりが相当きついし時間がかかる。弓が廃れたのは破壊力以外の所に改善の余地があったからだといっていい。あたるといたいし*。繰り返すけど、弓おっかない。


武器として必要な殺傷力は弓矢でも銃でも同じ、そして必要以上の威力を持たせる余裕など戦場にはない。弓が銃と同等なのではなく【熟練弓兵と同等の殺傷力を再現しつつ可能な限りコンパクトにしたのが銃である】が近い。


相手が騎兵でこっちに向かっているシチュなら更に威力が上がりますよってカンジ?カウンター乗りますよっと


威力て、子供かよ。弓と銃の差ってそんな部分じゃないだろ。誰でも簡単に扱えるってのが重要な差だろ


ロングボウと拳銃じゃ平均交戦距離が違うからどっち使ったほうが強いとか考えるだけ無駄よ


いや、比較対象の軍用小銃の方が、威力を抑えてるだけの話でだな。*より負傷させた方が、相手の負担が大きくなるから。*目的の猟銃なんかと比べたら屁みたいなもんだぜ?


その昔のゲームに、弓兵長とか弩兵長とかいうやたら強いザコがいてな。


ロングボウは中世にて最強 覚えておけ


>目を射貫かれて*だハロルド二世がこれに納得するかどうかはわからないが 罰だという説に納得するかどうかはわからないってこと?それとも研究されることに納得するかどうかはわからないってこと?


よくわからんけど*った時めちゃつらそう


矢を回転させるのはジャイロ効果というより矢に歪みがあっても一方向に曲がり続けるのを防ぐためでは?


弓矢は怖いな。投石と投槍も怖いけど。