新型マイクロ波プラズマ推進器

空気と電気だけで動く 新型マイクロプラズマ推進器 Jelena83/iStock

 プラズマの力で推進力を発生すると聞くと、なんだかSFに登場する夢のエンジンかのような響きがある。だがじつのところ、ソーラーエネルギーで機体を動かすプラズマ推進器なら、すでに宇宙船用に実用化されている。

 しかし、それらはあくまで宇宙空間での利用に特化したもので、地球の大気の中で使ってもまるで役に立たない。空気との摩擦で相殺されて、推進力がほとんど失われてしまうからだ。

 ところが、武漢大学(中国)の研究チームが開発したマイクロプラズマ推進器は、空気と電気だけで、航空機に搭載されているジェットエンジンに匹敵するほどのパワーを生み出すことができるという。

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電気と空気だけで推進力を生み出す

 新型マイクロプラズマ推進器は、燃料などなくとも、電気と空気だけで機能することができる。それは次のような仕組みだ。

 まず空気をイオン化して低温プラズマを作り出し、これをエアコンプレッサーを使ってプラズマ管へ向けて放出。その途中でプラズマは強力なマイクロ波とぶつかり、これがプラズマに含まれるイオンを激しく震わせる。

 するとイオンイオン化されていな原子と衝突し、プラズマの温度と圧力を一気に増大させる。このときの温度と圧力によって、プラズマ管内に推進力が生み出される。

 この推進器で重要なパーツが、マイクロ波を伝える平らな導波管だ。1kW、2.45GHzの磁電管で発生するマイクロ波は、導波管を介してプラズマ管へ送られつつ、半分の高さにまで圧縮される。

 この工夫が電場をいっそうパワフルなものにしてくれるおかげで、プラズマの熱と圧力を限界まで高めることができる。

マイクロ波プラズマ推進器

image by:Jau Tang and Jun Li

ジェットエンジンに匹敵する推進力


 そうして得られたプラズマジェットの推進力は、通常の圧力計を破壊してしまい、計測できないくらい強力なものだった。

 そこで研究チームは、重さの異なるスチール製の球を軽い順にプラズマ管の先端に置き、吹き飛ばされなくなったときの重量から推進力を推測。

 その結果は、毎時400Wおよび1.45立米の気流で1ニュートン(N)の推進力――電力あたりに換算すると、28N/kWだったそうだ。

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image by:Jau Tang and Jun Li

 ここから推測すると、テスラ社の電気自動車モデルS」に採用されている310kWのバッテリーを利用すれば、8500Nの推進力を得られることになる。

 またエアバス社が開発する電気飛行機「Eファン」には、一対の30kW電気ファンが搭載されているが、これが発生する推進力は合わせて1500Nだ。電力あたりでは25N/kWなので、これと比べても新型プラズマ推進器は優れている。

 あくまで計測値からの推定に基づく比較ではあるが、既存の飛行機に搭載されているジェットエンジンに匹敵すると研究チームは主張している。

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image by:Jau Tang and Jun Li

実際の実用性はどうか?


 もうすぐ燃料を燃やさないゼロエミッション飛行機が登場するのでは期待したくなるが、まだプロトタイプの段階であることを忘れてはいけない。たとえば、Ars Technicaでは次のように分析している。

 一番の疑問点は、この推進器のプロトタイプに流れ込む気流が、実物のエンジン15000分の1でしかないことだ。そのため、現時点で確認された推進力と実用レベルのそれには、数字にして4桁ほどの開きがあることになる。

 これほどの開きがあるならば、実験データの延長上に実機レベルの性能があるとは思わない方がいいというのだ。

 実際、研究論文には気流を最大にしたときの最大出力について言及がないことから、すでに何らかの問題が発生している可能性もうかがえるようだ。

化石燃料の厚い壁

 さらに効率の点ではエアバス社のジェットエンジンに匹敵するとしても、航空機用の燃料が持つ重量あたりのエネルギーは、バッテリーよりもずっと大きいという現実もある。そのためにいくら動力性能が高くとも実際の改善率はごくわずかでしかない可能性も考えられるようだ。

 それでももし本当に実機レベルで優れた性能を発揮できるのだとすれば、ゼロエミッションの空の旅が実現するかもしれない。

 現在、研究チームマイクロプラズマ推進器の改良に取り組むとともに、より正確に推進力を計測できる機器の開発も行っているというので、続報を待ちたいところだ。

この研究は『AIP Advances』(5月5日付)に掲載された。

Jet propulsion by microwave air plasma in the atmosphere: AIP Advances: Vol 10, No 5
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0005814
References:newatlas / arstechnica/ written by hiroching / edited by parumo 全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52290642.html
 

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空気と電気だけで稼働。ジェットエンジンに匹敵する推進力を持つ、新型マイクロ波プラズマ推進器


(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

やるじゃん中国。こういう基礎研究で芽が出て来るのを見ると、中国のノーベル賞ラッシュも遠い未来ではなさそうに思える


隠しコマンドによる自爆機能付き!の記載が抜けてない?


イオンクラフト推進の大型化すればするほど効率が恐ろしく悪くなるし、大型化すれば周囲への電磁パルスの問題もあるのでそこら辺のブレイクスルーが起これば実用化できそうだね


教養が足りないからわからんけど、かっこよさそうだから頑張って


実用化には何年かかるかわからんが、ロマンがあるな。


プラズマの腐食性とかどう対処するんだろう。面白そうではあるけど、プラズマに耐えられる素材開発もしないといけないし、中国にそんな事出来るのかと思うと・・・。


オチはいつものチャイナボカン


夢がある話だ!・・・と思ったら武漢大学か、眉唾モノだな


凄いんだろうけど、「武漢」って付くと胡散臭く感じる


今このタイミングで「武漢大学」ってのが眉唾物だな。政治意図が透けて見える。


人口太陽を作る計画とかも話を聞かないけど、実現して現物が見えるまでは信用がない。


所謂トンデモ科学なのですが…宇宙空間で利用するのに「電気と『空気』」とか  本文中にもある様に「実験室での理論値(「実際の実用性はどうか?」の所)」なので期待が出来ないです(数字を捏造するのは中共の基本) 他にもタイトルの「ジェットエンジンに匹敵(ry」も それだけの大きさの物を宇宙に持って行くのが至難ですよね?(突っ込み所が多すぎる)


多少(多大?)の偏見が入っとるかもしれんが「胡散臭い」手放しで「すげえ!」とはとても言えない。…理由は…わかるよな?


出来上がれば環境に良さそうだなって思ったけど、エンジンに詳しくないからわかんないや、でも少しでも社会に貢献できるならばいいと思うよ?


はやぶさのイオンエンジンと何か違うのか?


宇宙で使うなんてどこにも書いてないぞ。大気中で使う前提だから電気飛行機やジェットエンジンと比較している。はやぶさのイオンエンジンとの違いは、このエンジンは空気を電気でプラズマ化・増幅してその熱と圧力で空気を吹き飛ばしてるのに対して、はやぶさは吹き飛ばすものを自前で持っていき、プラズマを電気力で加速して放出する


2年位前に見たぞ。水プラズマが空気中で反応するってやつ。日本の論文で…


理想的な条件下での推測値がプロペラとほぼ変わらず、実用可能なスケールにすると4桁落ちる可能性があるとか、どう考えても無能じゃ?


JAXAのイオンエンジンは欧米のイオンエンジンとも全然違う。有限の燃料をイオン化するとき効率悪いイオンを分子レベルで回収までして寿命のばしてるやべーやつ


1.45㎥で風速1.1745m/hで合ってるかな?立体から吸い取って平面に吐き出すイメージで良かったっけか?


ダイソン扇風機の強力なやつかな(バカ丸出し)


このタイミングで出所が武漢。どうせなら汚名返上でウィルスで稼働する推進器でも開発すれば良かったのに。


一番の問題は電力だと思うぞ。ジェット機飛ばすだけの電気エネルギー作るためには、燃料使ったガスタービンエンジン位で発電しないと…ってあれ?