◆フロッピーディスクドライバーの面倒を見る人がいなくなった
7月の末に「Linuxでフロッピーディスクドライバーの面倒を見る人がいなくなった」という趣旨のニュース(ZD Net)が流れてきた。フロッピーディスクドライブは、過去の遺物になっている。Linuxでフロッピーディスクドライバーの開発を担当していた人は、ハードウェアをもう所有していなかったそうだ。
ただ、仮想フロッピーディスクドライブについては現在も需要があるようだ。そして、仮想デバイスならではの問題も発生している。実際のハードウェアから切り離されて高速に動作するようになったことで、現実のフロッピーディスクでは発生しなかった競合が起き、メンテナンスが必要だったそうだ。
そういえば、今年の3月に話題になったWindows 95の最速インストールを競うタイムアタックでは、オリジナルのフロッピーディスクやCD-ROMのイメージを使ってインストールするという話があった。古いソフトウェア資産を利用する際に、こうした機能が必要になるのだろう。
フロッピーディスクについては、ユーザーインターフェース方面の話題もある。「データの保存を意味するアイコンがフロッピーディスクなのはどうなのか」という話題は定期的にネットで登場する。「保存 フロッピーディスク」という単語でGoogle検索すると、多くの記事があるのが分かる。
フロッピーディスクは過去の遺物ではあるが、人類の記憶から完全に抹消されたわけではない。
「それにしてもフロッピーディスクか、懐かしい……」
そう思うと同時に、フロッピーディスク界隈は今どうなっているのだろうと疑問に思った。そこで少し調べてみることにした。
◆フロッピーディスクが現役だった時代
そもそもフロッピーディスクが何なのか知らない人もいると思う。20年以上前には、データを保存して持ち出すと言えばフロッピーディスクだった。パソコンにはフロッピーディスクドライブが付いていた。しかし、そうしたパソコンはどんどんなくなり、現在ではフロッピーディスクドライブが付いているパソコンは皆無だ。
フロッピーディスクは記憶媒体のひとつだ。プラスチック製の円盤に磁性体を塗布し、プラスチック製のケースに収めたものだ。8インチ、5.25インチ、3.5インチなどのサイズがあり、少しずつ形状が違う。
私が主に使用していたのは3.5インチのものだった。研究室にはもっと大型のものもあったが、Windows 搭載機で使っていたのは3.5インチだった。Windows 95 以降にパソコンに触れた人がイメージするフロッピーディスクは、この3.5インチのものになるだろう(参照:コトバンク)。
8インチ(容量128kB)のフロッピーディスクが登場したのは1971年、5.25インチ(容量80kB)は1976年。3.5インチ(当初は360kB、のちの最も普及した規格は1.44MB)のフロッピーディスクは、ソニーが1980年に開発した(参照:パソコン用記憶装置(HDD、FDDなど)の歴史、ITエンジニアの人生:オルタナティブ・ブログ)。
1.44MBというと、スマホで撮影した写真1枚よりも容量が少ない。しかし、テキストファイルを保存する分には、それほど困ることもなかった。
OSやソフトウェアのインストールにもフロッピーディスクは利用されていた。Windows 95 には、CD-ROM版とフロッピーディスク版(10枚や20枚、入れ替えないといけない)が存在した。
ちなみに、現在の Windows パソコンにも、フロッピーディスク時代の名残がある。Windows のシステムドライブがCなのは、昔、Aドライブ、Bドライブが、フロッピーディスクドライブだったためだ(参照:ねとらぼ)。
◆フロッピーディスクの終焉と亡霊
フロッピーディスクは、非常に広く普及していた。しかし、そうしたフロッピーディスクも、コンピューターの記憶媒体の大容量化に伴い、歴史的な役割を終えた。
2009年3月末に、三菱化学メディアは3.5インチのフロッピーディスクの販売を終了した(参照:三菱化学メディア株式会社)。そして、2011年3月末にはソニーも販売を終了した(参照:ソニー)。
パソコンにフロッピーディスクドライブが搭載されることもなくなり、読み書きが必要ならUSB接続する装置を利用しなければならない。筆者も、1台だけUSB接続のフロッピーディスクドライブを捨てずに残している。手持ちのフロッピーディスクからはデータを吸い出しているが、他人から渡されることを考えてのことだ。
生産が終わり、読み書きも特殊な装置が必要になっている。こうした状況になると、フロッピーディスクは世の中から消えたテクノロジーのように思えるだろう。しかし、古くからのシステムを維持しているところでは、亡霊のように生き残っている。
たとえば2014年には「米大陸間弾道ミサイルのシステムでは8インチフロッピーが現役で使われている」という話題があった。2015年には「米政府のCTOはホワイトハウスからフロッピーディスクを無くせるか」、2016年には「米政府機関、古いITシステムの運用と維持に予算の75%を費やす。8インチフロッピーディスクは来年退役の計画」という話が流れてきた。
ごく最近まで、IT大国のアメリカの中枢でさえこうした状況だ。機械によっては数十年現役の可能性がある。まだしばらくは、フロッピーディスクは世界の各所で使われ続けるのだろう。
【柳井政和】
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。
(出典 news.nicovideo.jp)
<このニュースへのネットの反応>
逆に考えると保安上安全性が高いと言えなくもない?(データ保存はカセット世代
↑ガチの長期保存は磁気テープって昔聞いたが、いまでもそうなんかな?
再生ボタンが右矢印なのも、起源を調べないと最早分からんしな
USBやSDカード系列と違って、一定の大きさと薄い板状だからメディアに直接、メモ書きしやすくて扱いやすかったなー。 もし今の最新技術でフロッピーディスク作ったら、容量とかどこまでいけるんだろうとかたまに思うわ。
5年ほど前まで勤めてた会社の工場だと、現役の装置が古くてシステムにFD使ってたし、そのFDにデータが記録されるからバックアップもFD。(壊れたらどうするんだろ?)って常々思ってたなぁ
私の職場では現役で使ってます。
太陽誘電とプレクスターが止めたのが痛い-Rメディアも...
古い工場だとPC98が現役という所が結構あるそうで、PC98を専門に扱う業者までいるらしい。当然FDも現役なのだろうな。
下手の横好き>>コンピュータ用の磁気テープは今でも現役ですよ、LTO-8とか新規格も作られています。HDDやSSDのようなランダムアクセスはできないけれど、HDDよりは転送量が多く、耐用年数30年と長期保存でき、容量あたりの価格が安いです。
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